SLを運転するには


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私自身も書籍などで勉強したものが殆どで、実際に本物を運転した経験がある人間ではありませんし、みなさんがそれぞれSL運転に関しての知識やこだわりを持ってますので、私が言うのもおこがましいのですが、何らかのお役に立てれば、と思い、私が勉強した限りの私のSL運転に関する技術(本物に一番近い運転は博物館にあるものしかないのでそれなのですが・・・)と知識をお話しようと思います。

おことわり

以降「本物」と記述しますが、私が博物館のD51シミュレーターを体験させていただいて勉強した内容、そしてあまたの書物やビデオなどの映像から解析したものを、そう呼びますのでご了承ください。
また、「このシミュレータ」とも記述しますが、これはOpenBVEとOS_Ats1.DLL、そしてこのD51の運転台を合わせたものを呼びますのでご了承ください。
SLに関する専門的な用語を私が知っている範囲内で使用しています(例えばリバー[1]を延ばす[2])が、このように注釈にしてあります。参考になるようでしたら幸いです。

この文章は、きちんとした書物を正しく引用する、といった確定的な調査内容に基づいたものではなく、あくまで私が勉強や体験をしたものに基づくものなので、現状ホームページでのみの公開とします。
こんなものでよろしければ、また要望が多いようでしたらCC-BY-ND4.0国際で複製再配布可能な文章で配布しようと思います。
もし気が向いたらメールフォームに文章希望、とでも書いてあげてください。

SLを運転するには、まず絶対的に線形の把握が必要になります。
線形とは、どこからどこまでが直線で、カーブはどこから半径何メートルで、登りと下りはここからここまでで何パーミル(パーミルは1キロ走って何メートル登り降りするかを表す単位)なのか、というもので、それを表した図面を線形図、といいます。
OpenBVEの場合、路線を選択すると、右側の「詳細」「路線断面図」と選択すると表示されますが、距離が短い、例えば私のこの釜石線modokiならかなり詳しく表示してくれます。

釜石線modokiの線形図とマップ

電車で運転する場合、「ふ〜ん、なるほどなるほど」程度で結構さらっと流される方も多いのではないか、と私は思うのですが、SL運転の場合これが私には宝の山に見えてしまうのです。
Openも含むすべてのBVEで路線を製作されている方々は、この線形図を入手されているか、もしくは作者自身で順に出発点から自力で手作業で情報収集する、などの方法で膨大な労力を割かれて作成し、公開されています。
私が作成したこの路線、釜石線もどきは、私はたまたま線形図が入手でき、ネットでどなたかが展望動画を作成されてアップされていたのでそれを元に作成しました。ここで釜石線の展望動画をご自身で作成されてアップされた方々にこの場を借りて、心より感謝を申し上げます。
そうして苦労されて作成された線形図とマップが概要としてこうして見えれば、どこがどう急勾配なのか急カーブなのかがよくわかるので、非常に参考になります。公開されていない線形を一から作成された方の線形をこうして拝見できるのはSL運転をする上ではとてもありがたい事だと私は思っています。
路線の作成方法は私の得意とする所では無いので、ここでは本題のSL運転の技術と知識に戻ります。


平坦な直線を走行する標準的な発車準備、発車、加速、絶気、楕行、停止までは、運転取扱説明書に書きましたが、実際の路線を運転するとなると、その難しさが格段に上昇します。
平坦な直線を走行する基本の全体の流れは、百聞は一見に如かずなので、ビデオを見てもらったほうが手っ取り早いと思ったのと、どんなものなのかもわかってもらえるので今のように公開しました。
しかし坂道発進などはわかりやすい例ですが、天候や路線の状態でも本物は変わります。博物館のものは天候は一定ですが、このシミュレータはOpenBVEで再現されるとおり、曲線抵抗や天候により滑りやすさも変わります。カントによる抵抗もです。また乗客の乗車率でも変わります。満員御礼だと本物ではかなり重くなるそうです。
真岡のような組み合わせでC11や12と客車3両では、路線にもよりますが非力な機関車で、急勾配、例えば真岡ならば茂木からの返しなどの25パーミルの勾配を登ると皆さんご存知のとおり加速することは速度が非常に落ちている時からの加速以外、勢いを維持するくらいでほぼ出来ませんし、山口線などの仁保からや、25パーミルではありませんが返しの津和野からの連続上り勾配でも機関士さんたちの技量をもってしても稀に条件によっては停止してしまうこともあります。そういった事が実際に起きて現代で体験できることこそSLの動態保存運転の姿だと思うのですが、現代では定時運転が求められるのとやはりSLへの長期的な保存に対する負担の軽減なのか、客車を気動車にしたりする動きがあるのは不安なところです。
私が作った釜石線もどきはカントが無いので抵抗もその分変わります。増えるか減るのかは私の知識が無いので申し訳ありませんが答えられません。また、線形図にはカント情報が無いので、それも含めてわからなかったです。更に乗客の人数でも変わります。満員御礼の場合だと人数が増える分重くなり、走行条件が悪くなるほど空転を招きやすくなってきつくなるそうです。
抵抗が増えるとその分重くなり、加速は鈍くなりますし坂では減速していってしまいます。そのため「定数」という牽引できる限界が定められていて、実在の釜石線では客車の定数はD51で5両です。また山口線のC57での定数は客車で5両です。
このシミュレータでは6両なので、減車する必要があります。
減車するにはTrain.datをテキストエディタで開き、



#CAR
110
1
35
6
20
1



とある部分の
35
6

35
5
とします。これで減車完了です。
そのままでも運転はできますが、まさに技量が試されます。とりあえず釜石から2駅分、釜石〜小佐野〜松倉までなら走破できると思います。
数を増やせば当然増車できます。また、35はその車両の重量なので、これは35トンの車両6両、減車したなら5両、という意味になります。
更にいうと(結局全てなのですが)110はD51(機関車)の重量、1は機関車の両数を表します。
本物では、普段から空転しやすいポイントが存在します。例えば登り坂に入り始めで、かつカーブになっているところ、(特に上り勾配での)踏切付近、落ち葉などが多いところなどなどです。
こういった所で加減弁を開け気味にしていたり、リバー[1]を延ばし気味[2]にしていたりすると空転してしまいます。特に上り勾配で空転を起したら復旧させるのは難しいので、事前に例えば加減弁を少し絞って[3]おきます。


ここからは運転に必要な技術を映像で見るほうがいいのですが、Youtubeにやたらアップするのも・・・と思うので(私のデモでよく、デモルートの坂道発進などを見てみたい、という方がメールフォームに多いようならYoutubeにアップしてみようと思います。気が向いたら見てみたい、と書いてあげてください。)、以下にやり方を記します。

トップページやYoutubeなどで、「もしかしたら本物っぽい」と書いたのは、これらが意外に良くできているのでは?と思ったからです。それらのやり方を記します。

行き過ぎたりしたのでバックに動かしたい

バックは逆転機の使い方を身につけます。前後方向は電車ではこのシミュレータでバイパスコックとして使用しているレバーサーを使用していますが、本物は前後方向は逆転機だけで行います。

  1. 逆転機を「PageUP」キーを押し、80%まで回す。ゲージが黄色で満たされます。
  2. バイパスコックを「閉」にする。このシミュレータでは「後」と表示させる。万一逆方向に動くようなら「前」位置にする
  3. 汽笛を短く鳴らし(このシミュレータではあまり短くありませんが)、ブレーキを解除し、加減弁を動き出すくらい、このシミュレーターで平地なら4kg/cm2くらいまで開ける
  4. 動き出したら、通常の発進のように、逆転機を引き上げ(ただし後方70%、60%としていく)、加減弁を引き加速する
  5. 所定の速度が出たら、絶気する(加減弁を閉める。バイパスコック開。逆転機を「後方」80%へ持っていく)
  6. ブレーキをかけて停車する
  7. 逆転機をMIDに持ってくる

以上の手順を踏みます。

ほんの数メートル前方に(後方に)動かしたい

正直これにはかなりテクニックが必要になります。

  1. 逆転機を動かしたい方向の80%まで回す。バイパスコックを「閉」にし、出発準備を整える
  2. 汽笛を短く鳴らし、ブレーキを解除し、加減弁を動き出すくらい、このシミュレーターで平地なら4kg/cm2くらいまで開ける
  3. 動き出して所定の速度まで出たらバイパスコックを開ける(このシミュレータの場合は中間位置に持ってくる)
  4. 加減弁を閉める(ここと一つ前は順序が前後してもいい。できれば加減弁を閉めてからバイパスコックを開きたい)
  5. ブレーキをかけて停車する
  6. 逆転機をMIDに持ってくる

以上の手順を踏みます。本物はバイパスコックの取り扱いが難しく、バイパス弁が解放されるには蒸気室圧力が5kg/cm2以下でなければなりません。うっかり加減弁を開け過ぎると、バイパスコックを「開」にしても圧力が高すぎて蒸気の供給を断つことができず、減速できないのです。よって本物はもっと難しいのですが、このシミュレータでは中間の位置にすることでどんなに高圧でも供給が止まります。


坂道発進をしたい

これには高等なテクニックが必要になります。

  1. 逆転機を進行方向の80%まで回すのを始め、出発準備をする
  2. ブレーキを転動[4]しないギリギリまで解放する
  3. 汽笛を鳴らし、加減弁を動こうとする力と坂に引っ張られる力が拮抗する位、このシミュレーターで16〜25パーミルくらいなら4kg/cm2〜6kg/cm2まで開ける
  4. ドラフト音(動作音)が聞こえ始めたらブレーキを開放し、動く力と坂に引っ張られる力が拮抗するか確認し、もし引っ張られるようならもうほんの少し加減弁を開ける
  5. 動き出したら逆転機を70あたりまで持ってくる
  6. 歩くくらいまで動き出したらもうほんの少し加減弁を開けてみる。線路状況により積雪など滑り易い時には9kg/cm2より開けない。空転する。
  7. もう少し動き出したら少しづつ逆転機を65、60と少しづつ慎重に引き上げていく。
  8. 勾配と線路状況によるが時速10km以上のどこかで条件が整えば、加減弁を満開にしても空転しなくなるので、そこでの限界まで加速する。
  9. 加速が落ち着いてきたら、可能な勾配なら加減弁をほんの少し絞る[3]などをして蒸気の消耗を抑えるか、加減弁は満開で下げられない状況で、可能ならば拮抗かわずかずつ回復できるようなカットオフ[5]を見出します。

以上の手順を踏みます。本物はこのシミュレータのように「動きそう」な段階では「ボッ」とは言わず、画面の動きなどで察知するほかないのでもっと難しいです。私にとっては、この感じが結構経験と勘がいるような運転方法をやらないと空転して止まってしまうので、これはなかなかうまく表現されているように思えました。

このシミュレータでの釜石から松倉間の運転の実際

では実際に釜石から松倉までを運転してみましょう。

釜石出発

出発準備を整え(逆転機を前進フルギア、ブレーキ緩解、バイパスコック閉)、信号を歓呼します。
「本線出発進行!進路左、釜石、時刻よし!」と歓呼します。
出発時刻が来たら、汽笛一声、発車します。動き出したら時刻を確認し、定時なら「定時」と歓呼します。
出だしは0.1パーミルの下りです。しかしあまり変化は感じないので、通常通り発車します。
少ししたら、ホーム右側の後方を監視してくれている機関助士さんが「後部オーライ」と言ってくれるので、確認の歓呼をします。「後部オーライ!」
次に3.5パーミルの登りに入りますが、通常かそれ以上にやや早めに加速しておきます。その次の13パーミルの登りまでにできるだけ加速します。ただし25km制限がポイントにあるので、そこを機関車が通り過ぎるまではそれ以上加速してはいけません。「そこを機関車が通り過ぎるまで」は、国鉄で現役の蒸機が走っていた時の基準で、現在はすべての車両が速度制限解除標識を通過した時からになります。どちらに合わせるかはみなさんの自由ですが、私は国鉄当時のやり方で加速します。

第三甲子川橋梁

左カーブにさしかかり、山田線と分かれる最初の複線の橋が第三甲子川橋梁です。この橋から13パーミルの登りにさしかかり、速度が落ちていきます。ここで本物では普通しないですが、ダイヤを遵守すべく加速します。加減弁を徐々に満開にし、リバー[1]を普段は足して70のところを足して80になるように少し延ばし[2]ます。加減弁を満開にするとき、一定以上の速度が出ていないと空転します。この条件では私はおよそ20kmと見てます。うまく行くと、減速から加速に転じるので、再び徐々に圧力を9kg/cm2に戻します。デモ運転では加速中に減速に転じないように早めに加減弁を全開に、足して70のまま加速を続けていますが、こういう運転でもいいですし、これなら一旦減速に転じる前に加速し続けられるので効率のいい運転と言えます。SLの場合はここで必ずこうする、というより機関士の流儀を確立して運転する、というアナログな経験と技術が必要なところが興味深いところだと思います。話を戻して、リバー[1]は節約運転に入るため、カットオフ[5]を30〜25%まで絞り[3]ます。
左R250のカーブ途中から下り10パーミルに入り、最初の踏切が中操踏切です。
このあたりに入ったら加減弁を7kg/cm2まで少し絞り[3]、カットオフ[5]を25%あたりまで引き上げ、ボイラー圧力計の値をアップにして凝視し、わずかづつ回復していくギリギリのところまでカットオフを絞り[3]ます。このとき速度が出ていなかったなら足して70から60になるようにします。うまく行けば40km前後まで速度が出ます。このときカットオフ[5]はおよそ25%あたりになると思いますが、加減が微妙なのでデモ運転の画像の圧力計を見て、このくらいの速度で回復していくのがいいのか、というのを見極めておいてください。


デモ運転では「圧力計」の計のごんべんに、針がわずかづつかかっていく様子や、単位のKg/cm2のKの上側の分岐部分が消えていく様子が見て取れると思います。言い換えるとそのくらい微妙なので、アップで綺麗に表示する機能はOpenも含めてBVE全体でも(私は残念ながら5以外はOpenしか実行できない環境なのですが・・・)表現されている方が私が見た範囲内ではあるのですがあまりおいでではなかったようなので、ぜひとも私がやりたかったものの一つでした。いい感じで見れていると思いませ・・・ん?
もちろん本物ではただ加減弁や逆転機を調節すれば回復していくわけではなく、機関助士さんの給水投炭との連携プレーがなせる技であることは言うまでもありません。
このシミュレーターでは疲れを知らない機関助士さんの投炭(まるで詰まりや石炭が落ちてこないトラブルを知らない永久メカニカルストーカー&重油併燃状態!?)なので、ここで回復していきます。

このシミュレーターでは蒸気室圧力計は加減弁を引けばその状態を常に維持しますが、本物は逆転機の組み合わせや速度変化、勾配での蒸気の使用量をはじめ様々な条件で常に変動します。なので本物は常に蒸気室圧力計を監視します。もちろんボイラー圧力計も監視し、どのくらい消費されているかを常に見ます。もし減り具合が早いようなら、カットオフと加減弁の組み合わせが今の線路状態で足して70でいいのか、80にすべきか、60にして少し節約気味にすべきか、という事を考えて運転します。
デモ運転での私は何度も何度も走っていて、線形を把握しこの組み合わせでこのくらい減っているだろう、という事は予想できているので、その確認のために何度かボイラー圧力計を見ていますが、わからないうちは前は見えなくなりますが全体を見渡せるように表示するといいと思います。出発時点の視点に戻すときはテンキーの「5」を押します。

一旦下り0.4パーミルになったあと、今度は中操踏切あたりから中妻トンネル入り口まで登り9パーミルになります。
うまく運転できれば45km以上出せます。そこまで出ていればそのままわずかづつ増える状態のカットオフ[5]で一気にトンネルまで走行します。トンネル入り口で44km位までうまく行くと維持したままトンネルに入れます。そうならなかった時は、ここで再び速度に合わせ、カットオフを足して70になるように合わせて加速します。
速度が足りない上にカットオフの組み合わせがうまくいかないとみるみる減速していいきます。回復のために下り坂に入ったら勢いをつけて走るのがポイントです。SLではこのわずか2パーミルの下りであっても、貴重な加速区間として機能します。ただしこういった時でも加減弁を開けすぎたりリバーを延ばし[2]過ぎると、蒸気の消耗が激しくなり、後が続かなくなるので気をつけます。
また電車であれば「え?10パーミル!?」という上り勾配であっても、SLを走らせる場合うまく操作できないとグングン減速していってしまい、うまく運転する技術が必要になる、というところが興味深いところだと私は思っています。

中妻トンネル

トンネルに入ると、2パーミルの下りになります。
ここで勢い良く入れていれば、加減弁を少し絞って7kg/cm2、カットオフ[5]はそのまま25%前後で加速させます。本物は空転しやすいので、砂を撒きながら走ります。遅くなってしまったときは、ここで足して70〜80になるようにし、加減弁を開けてリバーを調節して加速します。加速に転じて、少し速度が出たら、即座に足して60位にして加減弁を7kg/cm2位に絞らないと、蒸気の消耗が激しいので気をつけます。
トンネルを抜けて右R1000を抜けた所で、4パーミルの登りになってからの最初の踏切が丸石踏切です。

丸石・住吉踏切

トンネルを抜けて、最初の踏切が丸石踏切です。右R1000を抜けた直後の踏切です。ここを過ぎると登り12パーミルになります。丸石踏切まででうまく走れると50km位まで出せます。圧力は少し絞って7kg/cm2、ボイラー圧力は節約の効果で発車時と同じまで回復できています。ここまで余裕があるときは、停車まで給水に入ります。給水するときはボイラー圧力計が14.5kg/cm2を下回る前に給水を止めます。
この給水はインジェクター[6] なのですが、本来は加速中にはほぼないと言っていいほど使用しません。D51のように給水ポンプ[7]が付いている機関車では、加速中はほぼ100%給水ポンプを使用します。しかしこのシミュレータではOS_Atsではこれだけだったので、それを用いて給水します。
速度が乗りきれなかったときは、加減弁を9kg/cm2、逆転機を足して70になるように調整します。そして登り切ります。この場合注水は諦めます。
次の住吉踏切手前から、12パーミルに入ります。ここまでで速度に乗れなかった場合、足して70になるように速度に合わせて逆転機を回し、加減弁を9kgにしますが、加速するほどの力は出ないはずなので無駄に加減弁を開けて加速しようとはせず、その速度を維持してそれ以上速度を落とさないような運転を心がけます。途中で、右R2000があり、その入り始めに遠方信号機(の代わりの出発信号機)があります。ここで「遠方進行!次、小佐野停車」と歓呼し、時刻表を確認します。

小川川橋梁〜絶気〜小佐野停車

12パーミルを登り切ると、橋をわたりますが、これが小川川橋梁です。速度が出ているときはその手前の遠方信号機あたりから絶気をします。そうでない場合はこのあたりからやや先まで走行するなど、やや粘ってから絶気します。
左R1000に入り、小川踏切を通過したら、中継信号を確認し、「中継進行!次、小佐野停車、停止位置は共通!」と歓呼し、ブレーキ動作に入ります。この時少し見栄えが悪くなりますが、テンキーの「6」キーと左右の矢印で左側に視界を広げておくと、停止位置目標が見えやすくなります。

小佐野発車〜松倉トンネル

この時点でボイラー圧力計の値を確認し、14.5kg/cm2まで回復できていないようなら、次の最終部分の20パーミルを登り切るような蒸気量に達していないので、圧力の回復を図るため時刻の遅れを決断し、回復を図ります。このルートでは次の駅で終着なので、ボイラー水量はそれほど減らないので、注水は諦めます。
準備が整い、出発時刻が来たら、「本線出発進行!時刻よし!発車!」と歓呼し、出発させます。動き出したら時刻を確認し、定時なら「定時!」と歓呼し、遅れたらその時刻を歓呼します。「30秒延」などです。
次いで後部を確認(OpenBVEならF2キーで出来ます)します。ただしこの駅は右側がホームなので機関助士さんに確認してもらって「後部オーライ!」と歓呼します。
発車したら全力で加速します。およその操作として、20kmまでは加減弁9kg/cm2、それに近くなったら加減弁を満開にし、足して70になるように速度に合わせて逆転機を回します。合流のポイントでの速度制限にも気をつけます。国沢橋梁までに30kmくらいまで出せたら、加減弁を満開から9kg/cm2あたりまで落とし、逆転機を25%程度まで一気に引き上げ、節約運転に入ります。減速し始めたら、加速し始めるまで加減弁を満開、カットオフを50%前後まで回して減速から加速に転じさせ、再び加減弁を9kg/cm2あたりまで落として逆転機を20〜25くらいに引き上げます。以後松倉トンネルまで8パーミルの登りがずっと続きます。ここでわずかづつボイラー圧力が回復するように、圧力計をアップにして凝視し、回復していくカットオフを見出して調節します。
うまく調節できると、ほんの僅かづつ速度が上がっていきます。国沢踏切までに35km位出せていれば上等です。

この先ずっと普通のまま「足して70」の加減弁と逆転機の組み合わせを続けていると、おそらく20パーミルの途中で力尽きると思います。そうならないよう、足して60など、組み合わせを変えながら運転し、適切な組み合わせ、速度を見つけていくのが醍醐味だと思います。が、今回はデモ運転で私なりの最適解をお教えしているので、それで良ければそうしてみてください。このコースは時刻がSL当時の時刻をそのまま当てはめているので、私もダイヤ通り運転できていないという事は、私もまだダメ、という事です。このシミュレータ、特に私の設定した性能曲線が適当すぎるのかもしれないのですが当時やこれからずっとこの区間を走る機関士さんたちの技量がいかにすごいかがわかります。

松倉トンネル〜20パーミル

20パーミルに差し掛かると、みるみる速度が落ちてきます。ここでカットオフを30%あたりまで落とします。加減弁は9kg/cm2をキープして登ります。およそ25kmをキープできれば上等です。これほどの勾配だと、坂道発進で停止から一定の速度まで加速する以外、ある程度(おそらくこの勾配でD51の定数の5両なら25km前後)まで出ていたら、それ以上は加速することはもうできません。いくら加減弁を満開にしても、速度を維持するのが精一杯です。なので無駄に加減弁は引かず、9kg/cm2を維持します。本物でも同じようにキープしますが、本物は条件によって変動するので、逆転機や加減弁をうまく調節してキープするようにします。

〜松倉停車

引き続き20パーミルを登ります。勢いがついていれば、ずっと25kmを維持したまま登れるようになります。それまでは練習が必要です。
トンネルを出て2つめの橋、松ケ沢橋梁の手前に停車場接近標があるので、「停車場接近!松倉停車!停止位置共通!」と歓呼します。
ここで加減弁を少しづつ絞り、逆転機を80%近くまで徐々に回し、50%くらいまで持って行きます。それで登り坂の抵抗を利用し減速していきます。ホームの端っこで絶気し、20kmくらいで進入し、ブレーキをかけます。でないとホームの手前で止まってしまうからです。私のデモ運転でも案の定手前で止まってしまいました・・・。

以上が私のデモ運転を解説したものです。SLの運転は、線形を把握し、それに合わせた最適な加減弁、リバーの組み合わせ、速度を乗せた運転、下り坂を利用した加速など、様々なテクニックを必要とします。本物はなおさら必要になるので、そのあたりを本物(最初に言いましたが今私達がD51を運転できる「本物」は博物館のものしかないので、それなのですが)を運転する機会があったら、体験してみると良いと思います。

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脚注

[1]逆転機の別の呼び方です。機関士や機関助士は、運転の際にこう呼んでいます。
[2]リバーを延ばす、とは、逆転機を80%の方向へ持って行き、加減弁を開けてわざと蒸気を消耗するような運転をす際の逆転機の回し方を言います。
[3]加減弁を絞る、カットオフを絞る、逆転機を絞る、とは、加減弁は閉める方に、逆転機(カットオフ)はMIDの方に戻し、蒸気の供給量を減らす事です。
[4]転動とは、特に勾配上で、ブレーキが解放されて勝手に車両が動き出す状態を指します。運転上絶対にやってはいけない行為です。
[5]カットオフとは、逆転機(リバー)の締め切り率のことで、逆転機ハンドルの所でMID〜前後方向80%まで表示されているそのパーセンテージのことです。締め切り率が高いと、蒸気の供給量が減りますが、蒸気がその分高圧になり、また80%にすれば、蒸気の供給量も上がり、加減弁で取り出した蒸気をダイレクトに使用することになります。
[6]インジェクターとは「注水器」というもので、高圧のボイラーに炭水車の水を入れるための装置の英語の呼び名です。
[7]給水ポンプは、機関助士席側のボイラーの横にあるポンプで、ここを通して「給水温め器」という装置を通って温められた水がボイラーに入ります。
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